初任者の日々の積み重ね

『学校を創りたい』という野望を持ったペーペー教師です。2年で修了するはずが、闇の1年を経て、3年で大学院を修了し、現在は大阪の公立中学校で中学1年生の担任と理科の先生とサッカー部の顧問をしている26歳です。

語り後の最初の授業

金曜日

語りの後の1回目の授業。このクラス(1組)は最も『学び合い』に不安を抱いているクラス。先生にしっかり教えてほしい、先生の板書で答えを教えてくれる授業がほしいという要求があったクラス。授業中、生徒の許可をもらい、動画を撮ることにした。

1組で注意して見ていた子は、特別な支援を必要とする生徒A君。知的な障害がある以上に、対人関係を上手く構築することができず、自分から動き出すことができない子だった。

結果は全員達成できなかったが、今までになく活発に、主体的・対話的で深い学びを生徒たちはしていた。

かなり深いところまで納得するまで頑張って人に聞いている子もいた。

1番嬉しかったのは、A君が嬉しそうに「先生、初めて3人のサインもらえた」と言いに来たこと。この日は積極的に友達に質面しに行き、私にも「これで合ってる?」と聞きに来るぐらい活発だった。放課後動画を見返していると、その理由がわかった。A君の隣の席で、いつもできているか気にかけてくれていたM君が、「先生昨日コミュニケーションの話してたやろ?だから俺ばっかりに聞くんじゃなくて、他の人にも、これどういうこと?教えて?って聞いてみなあかんで」と伝えていた。M君は決して勉強が得意ではないが、授業はいつも一生懸命頑張っている子だ。昨日の語りは少なくとも数人の心には届いたのかなとホッとした。

 

もう1クラス、語りの後の1回目の授業があった。このクラス(4組)は学力が1番低く、定期テストでも他クラスと10点程差が出る。ただクラスの人間関係はとてもいいクラスだ。このクラスからも『学び合い』では理科がわからないという意見が多くでていた。4組で注意して見ていた子は2人。1人は特別な支援を必要とする子で、『学び合い』をしても1・2学期は寝ることが多く、私からもクラスメイトからも見捨てられていたB君。もう1人は3学期からの転校生Cさん。『学び合い』開始5分、Cさんのペンが止まった。どうしたんやろうと見に行くと、もう終わっていた。「答え確認に行っていいよ」とだけ声をかけ、4組の会長のDさんに、「Cさんもう終わってたで、教えてもらって来たら?」と言うと「えぇ!?」とすぐに動いてくれ、Cさんの説明を聞き、サインをしてあげていた。その後もCさんのところには交代交代で教えてほしい子が近づきたくさん対話していた。ただ最初にマグネットを動かす(全部理解できたら黒板のネームプレートを四角の中に移動させる)のには抵抗があったようで、クラスで最も理科ができるEさんに「Cさんもうできてるから、できたら一緒に動かしに行こうって声かけたって」と伝えるとニコニコ顔で「任せて!」という表情。とてもスムーズにクラスの中に入っていけている姿がとても微笑ましかった。やはり普段の会話よりも、授業の内容がわからないから教えての方が声をかけることのハードルは下がるみたいだ。

もう1人、B君。この日も頑張って起きていたが、わからないからと言って寝ていた。でも前までと違うのは、皆が見捨ててないこと。「Bくん、俺もうちょっとで終わるからちょっと待ってて」と声をかけて最後の最後まで一生懸命教えているFくん。F君も特別な支援を必要とする子だが、本当によく頑張っていた。

 

2学期は私自身が自分の課題に自信がなく、生徒の悪い行動にばかり目が行っていた。生徒の良いところを探そうとするとこんなにもワクワクしながら授業を見ることができるのかと思い、授業中ずっとニヤニヤしていたら、「先生なんでにやついてんの?」と言われた。「皆が一生懸命頑張ってるのが嬉しいからだよ」とは恥ずかしくて言えなかった。